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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)1167号 判決 1949年12月24日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人鍛冶利一の上告趣意第一点について。

論旨は、原審が判示事実を認定するのに、被告人及び共同被告人の原審公判廷における判示同旨の供述をもってしたことは、憲法第三八條第三項に違反する違法があると云うのである。しかし判決裁判所の公判廷における自白は憲法第三八條第三項の自白にあたらないことは、当裁判所屡次の判例の示すところであり(昭和二三年(れ)第四五四号、昭和二四年四月六日大法廷判決、昭和二三年(れ)第一六八号、同年七月九日大法廷判決各参照)、次に共犯者である共同被告人の各自白は互に各被告人の自白の補強証拠として採証することの適法であることも亦從來の判例とするところである(昭和二三年(れ)第七七号、昭和二四年五月一八日大法廷判決、昭和二三年(れ)第一一二号、(昭和二三年七月一四日大法廷判決各参照)。されば、原判決には所論の如き違法はなく、論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨は、原審認定の強盗予備行為は、未だ現実に強盗の準備行為として客観的に表現されたものとは云うを得ない。即ち庖丁等兇器を買って持っておることは強盗も出來ることの一般的可能性にすぎない。即ち本件においては、用いたであろう場合に用いていない点から見て、原審が本件を強盗予備と認定したことは擬律錯誤の違法があると云うのである。しかし、原審の認定した事実は、他人を脅迫して金品を強奪しようと共謀し、これに使用するため、出刄庖丁刺身庖丁ジャックナイフ及び懐中電灯を買求め、これを携えて姫路城桜門附近を徘徊したと云うのであって、強盗予備罪の構成事実として何等欠くるところはないのである。そして、この事実は原判決挙示の証拠により十分に認め得るところである。論旨は畢竟原審認定の事実と遊離して、独自の見解を述べるものか、或は原審の専権に属する事実の認定並びに証拠の取捨判断を攻撃するものであって採用に値しない。論旨は理由がない。

仍って刑訴施行法第二條旧刑訴第四四六條に從い、主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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